白棹サイド

翠の生家に向かう道中、辺りに人の気配が無いことを確認して白棹は口を開く。

白【…誰も居らぬ。いい加減いつまで隠れているのだ?秋雅。】

い「……え……?」

クルリと回転するといずなは驚いたように固まる。

だが、すぐに苦笑する。

秋【鋭いのう?何故わかった?】

白【生まれた瞬間から貴様を知っているのだ。わからぬ訳が無かろう?】

秋【そうか。そうじゃな。】

白【何故わざわざ逝った振りを?】

訝しげに問うと秋雅はバツが悪そうに笑う。

秋【本当はそのまま逝こうと思っていたのだが、この娘に引き止められての。伝えたいことはないのか?と言われてな。面と向かって言うにはちと恥ずかしいからな。この子の口を借りたのじゃ。】

白【そうか。それで、ちゃんと伝えきれたか?】

秋【まぁ、猿鶴がまた誰かの式になるなど思わなかったが、これも奴の自由よ。好きなだけ神木にいるが良いさ。】

フッと笑い扇子を持つ仕草をして持っていないことに気が付く。