い「そして翠さん。」
翠「はい。」
名を呼ばれいずなに向き直ると彼女は手に持っていた扇子を差し出す。
翠「え…」
い「就任祝いだそうです。"儂のお下がりですまないが受け取ってくれ。"って…」
翠はそれを受け取り、ジッと見つめる。
これは降霊術を行う際、特定の魂を呼ぶには生前所持していたものがあれば助かるからといずなが秋雅の所持品を要求したものだ。
翠が知る限り、秋雅はこれを手放したことはなかった。
翠「けど…これはババ様からの贈り物だと聞いたことが…」
賢「だからこそお前に譲ったんだろう。」
翠「賢人さん!」
ひょっこりと翠の後ろから手を伸ばし、賢人は翠の手から扇子を取る。
賢「見てみろ。あの方が大事にされていたからとても綺麗だ。これをただ飾っとくなんて扇子が泣くだろ?」
扇子は開くと桜の木と花びらを散らしたもので何十年と愛用していたのに傷みが少なく素敵なものだった。

