ガタンガタン

過ぎ去る景色をぼんやりと見詰め、チラリと通路を挟んで隣に座る老人を盗み見る。

老人は前の座席をただ見詰めるだけで全く動かない。

翠(こりゃ自分から話し掛けない限りこのままなんやろな。)

1つため息を零したのは神木陰陽道 神木 翠。意を決して言葉を紡ぐ。

翠「…そろそろ教えてくださいませんか?何故、式神を寄越してまで私を呼んだのか。」

声を掛けると老人は意外そうに少し目を見張る。

秋「…気付いておったのか。」

そう呟く老人、神木陰陽道 神木家現当主 神木 秋雅、の良くできた式神だ。

翠「最初は驚きのあまり気付きませんでしたが、ホームでもう一度拝見した時に。」

翠達は今、列車の中。翠の一人立ちのお役目が終わり、待ちきれず突然ジジ様が迎えに来たのだ。