翠(晴明、わかっとるん?この子の中には彩華がいるんよ?)
晴(わかっている。だからこそ君に任せるのだよ、才ある者よ。)
心の中で会話をする。霊戻しは歴代の当主とはいえ、式だ。心で会話など造作もない。
晴(もし彩華が何か企んでいようとも、まず君を殺そうとするんじゃないかな。君が油断せずにいれば回避出来るでしょ?)
確かにそうだろう。そうなのだが…
翠(つまり、私は囮か?)
晴(言い方は悪いけどね。しかし裏を返せばそれは信頼の証だよ。)
翠(……わかった。)
翠「いずなさん、立てる?」
振り返り手を差し出す翠の顔は先程の困惑した目はどこへやら。
差し出された手を握り立ち上がるいずな。
翠「さぁ、こっちへ!」
そのままグイッと手を引きその場を離れる。
い「……あの、陰陽師さん。その…」
翠「いずなさん?」
い「どうかこれを…この悲しい記憶を…」
そう言うといずなは翠の両頬に手を添えて、少しずつ己の顔を近付ける。
翠「…いずなさん?」
翠はそんな彼女に警戒して刀を強く握る。
しかし、いずなはコツンと額を合わせ目を閉じる。
い「どうか受け止めて。悲しい神子の物語を…」
小さく聞こえたその言葉と同時に、頭に何かが流れ込んできた。
その瞬間、頭に激しい激痛が走り思わず目を閉じた。