暗い道を壁に手を当てながら慎重に前に進む。

賢「邪気が強いな。」

ウッと口元を押さえ少し辛そうに歩く賢人に翠は僅かに振り返り、彼の手を握る。

賢「翠?…ッ…!?」

翠「どうですか?楽になりましたか?」

翠は賢人の身体に纏わりついた邪気を浄化してそのまま手を引き歩く。

賢「あ、ああ。すまない。お前は平気なのか?」

翠「ええ、退魔刀を持っているからわりと大丈夫ですよ。」

ニコッと笑いそのまま何でもないように歩く。

しかし賢人は握られている手に僅かな震えがあるのを感じ取っていた。

それが恐怖からか不安からか先程のさとりの揺さぶりの為かは定かでは無いが、それでも気丈に振る舞い他人を気に掛ける姿に賢人は胸を締め付けられる想いがした。

賢人はそんな震えを止めるように握る手に力を込める。

翠も加わった力を感じ、少なからず詰めていた息をこっそりと吐き出した。