賢(もう昔みたいにお前は大声出して泣かないんだな。)
ジジ様が息を引き取って、翠は静かに涙を流していた。
それがあまりにも儚く美しく見えて、俺は恐かった。
賢(このまま…消えちまうんじゃないかって…)
せめて顔の血だけは拭かせてくれと頼みジジ様の顔を泣きながら丁寧に拭って手を合わせた翠は、そのまま糸が切れたように崩れた。
慌てて支えたが、あの時は翠までもが死んでしまったかと思い呼吸を確認して心底安堵した。
ふと目についた彼女の手を取り、握ろうと手を開かせると
賢「……!…爪痕…」
小さな掌にポツポツと小さな傷が出来ていた。
強く握り締めたんだな。
チュッと傷に口付ける。こんな小さな傷でも、コイツが血を流すのは嫌だった。
けど、もっと嫌なのは…心の傷。
心の傷は目に見えない。癒す術を知らない。
賢「どうすれば、俺はお前を救える?」
手を握り、甲に口付けを贈る。
翠は変わらず規則正しい寝息を繰り返すだけで当然、返事はない。
暫く、そのまま髪を撫でていたらいつの間にか瞼が下がり、俺も深い眠りについていた。

