1人は銀色の着物を纏い、もう1人は金色の着物を纏っていた。
2人はそれぞれ着物と同じ色の布を頭に被り顔は見えなかったが、賢人には片方の人物の霊力によく覚えがあった。
賢(え…まさか…)
音色に合わせ2人は頭に被っていた布を落とすと、予想していた通り金色の着物を纏っていたのは翠。その隣には紫苑がいた。
全員が息を呑む。
鈴と舞扇を広げしなやかな動きをする紫苑。
そして刃を潰し、綺麗な装飾をされた剣を構える翠。
美しかった。
その一言ですませるのが勿体無いほど2人は輝いていた。
翠が一歩歩けば紫苑が合わせるように一歩下がり、2人の動きを見ながら蒼希が旋律を奏でる。
一見、双子が翠に合わせているように見えるが、実は翠のペースに双子が飲み込まれている。
その事に気が付いているのは賢人と拓海達と共に屋根に登って見ていた白棹だけだろう。
翠が纏う雰囲気は全てを支配し包み込む、そんな優しさがあった。
賢(まるで大空だな。)
彼女を一言で表すなら大空。晴れ、雨、雪に嵐。それら全てを拒絶せず受け入れ包み込む。そんな大空に似ているのだ。