ドキドキの琉との夏が始まろうとしてる事を私は知らない。
「昼、何食べるの?」
「ん?ラーメン。」
私が聞くと琉が笑って言う。
「ら、ラーメン?」
「食べてみたいんだ。」
「そう…」
あー…給食で出たけど
ちゃんとしたラーメンって感じじゃないし。
ラーメンも琉には珍しい。
本当に琉はお坊ちゃまだ。
「何がいいの?琉は。」
「しょうゆ。」
「そう…」
「行こうぜ?」
「あ、うん。」
また
文句言われたらやだな…
そう思いながらも
早足で私より先に歩く琉を追いかけた。
琉にラーメンも
イメージが湧かない。
琉は普通と違うもん。
〈ガラッ〉
「いらっしゃい。」
ラーメン屋に入ると琉はカウンターの前の席に座る。
私も琉の隣に座る。
「瑞穂、何にする?」
「しょうゆ。あ、餃子も食べるけど琉分けない?」
「ああ。じゃあ俺もしょうゆにしとく。」
「そう。」
すると
「すみません。しょうゆラーメン二つと餃子一つ。」
琉は目の前にいるおじさんに言った。
おじさんが頷くと私は琉を見る。
「昼食べたら次どこ行くの?」
「そうだな。遊園地なんかどうだ?」
「遊園地?」
「俺…中学の校外学習でしか行った事ない。」
「え…」
琉…遊園地も…?
「家族で出かける事なんてあまりなかったしよ。そういう場所は学校の行事でしか行けない。」
「そうなんだ…」
「だから瑞穂と行きたい。」
「え…」
――ドキッ…
琉…?
だけど
「遊園地、おばけ屋敷も行こうな。」
琉はにやっと笑って言った。
「なっ…琉〜」
やっぱり
琉はやなやつ。
おばけ屋敷も私は怖いから!


