花散らしの雨

「あ、おかえり」


病室203。

美輪に連れられて戻ってくると、倉敷があの端正な顔で迎えてくれた。


倉敷……

元気そうに見えるけど、一度もベッドの上から動いてない。


美輪がさっき話してくれた。



 「桂の絵、お兄ちゃんに見せてあげるつもりだったの」

…そういや、美輪の大切な人って倉敷だったんだな。


 「10日が、お兄ちゃんの手じゅつの日でね……それまでに……」


 「……倉敷、やばかったの?」

 「……元々、持たない手じゅつかもって。体力つくまで待ってたんだけど、これ以上は待てないだろうって」


倉敷の身体の事情……俺は全く知らなかったけど、瀬戸際だったんだ…って感じた。


 「10日の日ね、ちょうどお兄ちゃん、あぶないじょうたいになって。夜手じゅつだったのを朝にしたの。だから……あたし桂の絵見に行けなかった」


美輪はずっと付いてたんだろう…倉敷に……
手術が終わっても、ずっと……


 「学校、ちゃんと行ってるのか?」

 「うん…お兄ちゃんが、行けって言うから」


…とんだお兄ちゃんっ子だな。

だけど分からなくもない。


少しだけ顔を見合わせた俺達に対して、ベッドで小首を傾げた倉敷は、そんな大手術をした様な感じは全くなかった。

「なんで蘇芳頭へしゃってなってんの?」

「雨降ったんだよ今」

身体を動かしてないって言うのも、言われなきゃ気付かないくらい、こいつからはマイナスオーラが出てない。

これは、今俺という元クラスメイトがいるからなのか、美輪がいるからなのか、本人がポジティブだからか分からないけど……

もし強がって取り繕った態度がこれなら、こいつは凄い奴だ。

だが俺がいる事で無理をさせているなら申し訳ないぞ……



「倉敷…大丈夫か?」

「は?俺よりおまえ大丈夫?美輪と仲直りしたのか?」

あっけらかんとした倉敷に俺は思わず拍子抜けしてしまう。

問い掛けに美輪が大きく頷くと、倉敷はニカッと笑った。