花散らしの雨

「おまえギックリ腰なんだって?皆超笑ってたんだけど。俺も笑えたけど」

「なんだよかっちゃんまでー!」

学校の近くにある結構でかい病院。
看護士に部屋番号を教えて貰って拓造を探すと、なかなかの大部屋に真っ白なベッドの上から起き上がれないでいる拓造が居た。


「笑い事じゃねーんだよ〜まじハンパないからギックリ腰!かっちゃんも気をつけて!」
「俺ぁそんな腰捻るよーな事せん」

しかしギックリ腰って親父がなるものと思ってたけどなぁ。

「おまえ本気で立てないの?」
「昨日はね。初めてタンカ乗ったぜ〜治療して貰ったから今は調子良いんだけど一日絶対安静だから」

ハハハと笑う拓造はいつも通り元気そうだ。良かった良かった。

吉沢から預かったメロン味の飴を渡したところで、俺は餞別の物を何も持ってきて無かった事に気付く。
「かっちゃんさり気に餞別の使い方違くない?」


大部屋の窓からは、調度日が傾きかけた空と焦げ茶の木が見え、枝からは青葉が生まれている。

光に反射してうっすらと窓に映る俺の顔と、実際の木の幹が並んでいた。

これ、桜の木かな。

…なんとなく。


そう思った時だった。


「そうそうかっちゃん、聞いてびっくりこの病院に倉敷も入院してるらしくてよー」



ぼんやり見ていた窓に映った、小さな歩く人影。

俺の後ろ…隙間が空いていた病室の扉の向こうに、一瞬だけ垣間見たそれ。


「?!」


振り向いた瞬間それはもう通り過ぎていて居ない。

でもあれは…

「かっちゃーん、聞いてる?」


あれは……


「…美輪?」


ふわりとしたウェーブの髪、ワンピースに、見知った背丈。



「えっおま、どこ行くの?!」

判断した時には俺は驚いている拓造を背に大部屋の病室を飛び出していた。




見間違いかもしれない。

それならそれでいい。


けどもし本人なら……