花散らしの雨

花散らしの雨は名前の如く沢山の花を散らしていった。

昨日まで咲き誇っていた桜は殆ど見る影もなく、桜並木の下は淡い桃色の絨毯が敷かれた。


その絨毯も雨が乾くと共に剥がれていき、あの日から一週間も経てば、“ここで桜が咲いていた”という形跡が多少残る程度。

既に木々は葉桜へと向かい始めている。



4月17日。


未だ俺は、あれから美輪に会っていない。


正確には、会えないでいる。


会おうと思って会える奴じゃなかったから。


だって俺は…あいつの事を何も知らない。



『絵は誰かに見てもらう為にあるんじゃないの?』


9日に完成したあの桜の絵は、行き場を無くしている。

人には見られている、が、最も見て欲しいと思うやつに見られていない……

鮮やかな絵の色が、俺の気持ちと相対している様な気がした。



だって……あんなにはしゃいでて、すっぽかしだなんて。ちょっとショックだろ。

あの場所へ行っても会えない。雨が上がった次の日も、その次の日もだ。



美輪。

妖精なんてものを純粋に信じるほど俺は素直なガキじゃないし、美輪の事も“自称妖精”だと思ってた。


でも、あの日以来姿を見せない美輪に対して、花びらと共に散ってしまったんじゃ…

なんて、そんなファンタジーな考えが頭を侵食する。

そんなわけないと、いつもすぐバカバカしく思うのに。


…じゃあ、もしあいつがファンタジーな住人だとしたら、どうなる?

また来年この季節に!

って事になったりするんじゃないだろうな。


来年俺ここに居ないし。


来年の10日に現れたりしないよな。



『――さいごかもしれないから……』


あれはどういう意味だったんだ?



……俺はこのままでいいのか?





美輪……おまえは……


まじで、妖精だったのか?