花散らしの雨

美術室の窓際に、一枚の絵が立て掛けてある。



濃い青空を守る様に翳る桜の花びら。

淡いピンク、薄黄緑色をした小さな花の額達、焦げ茶の幹、輝く太陽光、白い光……



お世辞にも調っているなんて言えはしないが、優しさとあと勢いがある、なんて顧問には言われた。

「おまえ、左で描くと画風変わるな」

そりゃ利き手の様にはいかないから変えるしかなかったんだ。

「こっちの絵の方がおまえが描いたって感じがする」

どういう意味だ?

「おまえの見た目で前みたいな賞取っちゃう様な繊細作品描かれたらびっくりするからな」

…褒め言葉…じゃねぇよなこれ。


「…どーも」

「あ、名前書いとけよ」



あぁ、忘れてた。



尖った鉛筆を借りて絵に向かう。


右下の角にサインを走らせた。




08 4/9 Kei.S