花散らしの雨

「お…おまえどうして」

「おねがいをしに来たの」


放課後とはいえまだ校内には生徒も先生も沢山いる。

校門からここまで確かにそんな距離はないが、よく見つからなかったもんだ…


「おまえよく入って来れたな」
「すごいでしょ!…って、あ、あたしはここの桜の」
「妖精だろ?」

俺が少し笑って言うと、美輪はバツの悪そうな顔をしながら頷いた。


「で、お願いってなんだよ?」


美輪は少し戸惑った顔をした後、自分の顔の前でパンッと両手の平を合わせた。

「桂!桜の絵、今日までに完成させてほしいの!!」
「え…」

突然、どうした?

「なんで?」

「や、うーんちょっと、ね」

苦笑の美輪。


なんだかいつもと感じが違う。

…なんだろ。

焦ってる?



「まぁ、あと少しだから出来なくはないけど…」

そう俺が言うと、美輪はぱっと顔を明るくした。

「ほんと?!ありがとう!楽しみにしてるね」


…可愛い。

だけど、どこか儚い…


美輪?


「美輪…どうかしたのか?」

「え?」

「今日いきなりそんな事言うなんて…なんか様子も変だし」

俺の言葉に、美輪は笑顔で首を振った。

「なーに言ってるの桂!あたしはいつも通りよ!」

あたしは元気なの、そう付け加える。


「そう、か…?」

「うん!ね、ちゃーんと完成させてね!あたしぜったい見るから!」

仕上がりを楽しみにしてるから、今日は絵は見ないの。
…そう美輪は言った。