花散らしの雨

4月9日。

高校生活最後の年の始まりだ。

だがそんな実感は殆どなく、始業式の校長の話の内容もあまり覚えていない。

高校のスゴイところは、始業式が終ると二時間目から普通に授業が始まる事だ。

しかしこんな春麗らかな日。
まだ春休み気分から脱却していない生徒の奴らは、先生の話も右から左へ状態だった。

勿論俺だって例外じゃない。
眠たい顔を敢えて起こしもせず、俺はただ窓の外の桜を見ていた。


桜…

今日は流石に美輪も来ないだろうな。

というか学校が始まれば関係者以外の、まして子供が高校に潜入するのは難しい。


…。


けど俺は絵を仕上げる為に、今日もあの桜の小道へと赴くのだ。

部活は放課後からだし、今までみたく思いきり時間があるわけじゃないけど、もう少しで完成だから問題ない。


そろそろ六限目が終わる…


明らかに昼夜逆転生活してたろって奴は、お粗末に広げた教科書の上に顔を突っ伏して動きやしない。


半分くらいしか翻訳出来なかった漢文セットを、チャイムと共に机に仕舞い込んで俺は帰り支度を始めた。


「そういや荒木見てないな」
そう何の気なしに言うと、隣の拓造が楽しそうに答える。

「なんか始業式だけ出て帰らされたらしいぜっ キンパだったから」
「げ、あいつ髪戻さなかったのか?すげー度胸」

クラス替えがあって俺と拓造は同じクラスになってしまった。
「なんだよ、もっと嬉しがれよ~」
「なんでおまえ俺の考えてる事分かんの?」
しかも隣の席だし。

これで暫く平穏な新学期とはおさらばだな。



「かっちゃん今日も絵だろ?」
「あぁ、でも部室寄ってから」

HRが終わり、俺は荷物を持って美術部の部室へ向かった。


大して用があったわけじゃない。
部活の顔合わせは明日からって連絡きたし。ただ……


気まぐれに、見たいと思ったんだ。


あの絵を。