四月始め。

まだ春休みだというのに、俺は部活動という名目で学校へ来ていた。

校舎と運動場を挟む小さな小道では、もうすぐ満開を迎える桜の花が空一面をピンクにしてる。

俺はこの風景が好きだった。


よく、似合わねぇ!!って叫ばれるけど。

いぃじゃん、好きなものは好きなんだっつーの。


桜の下は簡単な芝生になってて、俺はその適当な位置に目をつける。
肩に掛けていた紐付きの板を下ろし、なんかの服買った時に入れられた、でかい袋から色々と取り出した。
この袋…大きさも調度良くて気に入ってる。

中にはスケッチブックとクロッキー、絵の具セット。


…誰がどう見ても、これから桜を描こうとしているイマドキの高校生だ。


運動場からは部活動に熱心な、野球部とサッカー部の走り回っている声が微かに聞こえる。


「元気だねぇ〜」

俺はそれをチラ見してから芝生の上に座り込み、いそいそとスケッチブックの白紙ページを開けた。



「のぉぉぉかっちゃん!!!」

直後背後から変な声で呼ばれて思わずびびる。

「なっなんだ?!」

「かっちゃん!!おまっまた絵ぇ描きに来たのか?!こんな春の陽気の中に!!好きだねぇ〜〜〜!!」

むしろ春の陽気だから来たんだよ…好きがどうのって言うなら、朝からせいを出してる野球馬鹿のおまえにも言える。

「いいじゃんか拓造!俺の趣味なんだから!シッシッ」

適当に追い払っても気にしない辺りが拓造の楽なところだが。

「いやいやかっちゃん、ほんっと見た目とギャップあるからね!チャラ男だからね?!キミ」
「それは言い過ぎだろ」

髪とかをいじるのも手軽なアートみたいでいぃじゃん?
…前こいつにそう言ったらドン引きされた。

とにかく俺は絵を描く傍ら多少ビジュアルにも気を配っている。

「絵ってさー黒髪でぼっちゃんな感じで、制服キチッと着てる奴が描くもんだろ?」

「拓造それ偏見だから」

まぁ確かにうちの美術部にそーいうのは多いが。