花散らしの雨

「じゃあ桂、これは知ってる?」

横から美輪は上目使いで俺を見た。

「あのね、春の雨ってけっこうパラパラしてるんだけど、四月の真ん中くらいにすっごい大雨がふるの!」

「大雨?」

「そ!雷とか鳴っちゃってすごいんだから!」

言われてみればこの時期、毎年強い雨が降った日があったような…なかったような。


「その雨をね、花散らしの雨 って言うんだよ」

「へー」

俺はそんな単語初耳だったので、素直に感心した。
なかなか儚いネーミングじゃないか?

美輪は微笑んで俺を見上げていた。


「その雨が降るとね、ほとんどの桜が散っちゃうの。昨日まできれいにたくさん咲いてたのに、大雨にたたき落とされるの…」


美輪の言葉。
それは、何かの暗示の様な気がして…


「…そうなんだ」


「うん。でも、それもキレイの一つだと思うの。自然の流れっていうの?それに雨の後は花びらのじゅうたんが出来るんだよー」


美輪は出来事を受け入れる様にそう語った。



美輪。



桜の妖精なら、花が散った後は何処へ行くんだ?


……なんとなく聞きそびれた質問。


美輪に送る、スケッチブックの桜…


俺は、ちゃんと描き上げる事が出来るのか?





リミットは、花散らしの雨が降る日。




4月8日が終わる。