花散らしの雨

駆け足で運動場に戻る二人を見送って、俺は傘を広げた。

小気味良い音が鳴る。




「…美輪?」


桜の芝生へ立ち寄って、小さく呼んでみた。

今日はもしかして、来てないのか…?




「かっつらー!!!」


後ろからどーんという衝撃と共にそれは現れる。

「来たんだ今日!!雨ふってるから来ないものだと…」

「おまえが居るかどうかだけ気になったんだよ」


雨の中ハツラツと元気な美輪を見て、ちょっと拍子抜けした俺がいた。

…ま、確かになんでこんな奴気にしてんだろーな。


「さては桂…あたしにほれたわね!」

「そうだね、じゃ、俺はこれで」

踵を返した俺に美輪は案の定しがみついてくる。

「待って待って!!ジョーダンですかまって〜〜」

こいつは…



「ほら、ちゃんと傘させ」


俺に突進して来たせいで、無下に扱われていた美輪の傘をきちんと持たせてやる。

美輪の傘は桃色で花柄だ。


「今日の雨ってなんかいいよね、やさしい感じで!」

美輪は空を仰ぎながら言った。


天から降り注ぐ、穏やかな雨。


「春雨って言うんだぞ」

「そうなの?!初めて知った!食べ物と同じなんだ!」

そういや小学生の歳だっけ、こいつ。

「春霞とかもあるよな」

「ハルガスミ?へーきれいな名前だね!」

ふふ、と美輪は笑う。


ああ…なんか、こんな日は俺も穏やかになれる気がする。


「桂、雨だからあんまりかみ型きまってないね!」

穏やか?ナンダソレ。

「はっおまえだっていつものウェーブが爆発してるじゃねーか」

美輪は勢いよく自分のふわふわした髪質を押さえ付ける。

「うるっさいわね!あたしはどんなかみ型でもにあうからいいのよ!」

「俺だってあんま逆立ってない髪型もイケてるしー惚れるなよ美輪」

だぁれが!!っと有無を言わさず返ってきた。

俺らが揃うと穏やかとは縁遠いぞ……


でも、楽しい。