花散らしの雨

4月7日。

今日も美輪は俺の隣に居る。

流石に突然の登場にも慣れたし、美輪が傍に居る事もなんだか普通になってきた。

けどはたから見ると不自然なんだろうな。
高校生と女の子なんて…俺は制服着てるわけだし。

でも偶然か、美輪と居るところを見られた事はない。

見つかれば俺も美輪も絶対何か言われるだろうから、誰も美輪を見てないって事だ…


「桜の絵ね…」

慎重に着色している俺の横、美輪が独り言の様に呟いた。

「あたしの大切な人が、すごく好きな桜の絵があるの」

「?」

大切な人?


「その絵はね、前に小さなてんらん会にも出たんだって」

「…へー」

珍しい。
美輪が語ってる。


「その桜の絵がここの絵だったの」

「ここ?」


「そう、この高校の桜の絵」


美輪は空一面の桜の、更に向こう側を見つめている様だった。


俺は少し筆を止める。

「小さな展覧会に出て?ここの桜…」

「あたしも一回だけ見たんだけど、すっごい上手くてキレイだった!!でも作者の名前忘れちゃったのよね〜たしかス…スドウ…?」

美輪はぱっと表情を変えて頭を捻り出す。


俺には心当たりがあった。


「それ、もしかして蘇芳…」

「あっそれ!スオウ ケイ!!」

…ビンゴ。

「なんで知ってるの?!」

「や……この学校、の奴だし…俺も上手いと思ってるから…」


俺の返答に、美輪は「そっか〜」と納得していた。

「ここの生徒じゃないとこの桜描けないもんね!あ〜桂も知ってたのか〜」


あれだけの絵を、俺は描けない…

その実感が…怖い。



俺の絵筆はさっきから走りだそうとしない。


その絵の題材であるこの桜を見て、美輪は何を思ってたんだろう。


美輪の感じる事、考える事って…