花散らしの雨

美輪の不思議なところは突然現れて突然消えるところだ。

昨日も昼を食べて暫くした後、

「じゃあまたね!」

と言って忽然と姿を消した。


一体どこへ行ったのやら。

もしかして昼飯をありつきたいだけか?なんて思ったりしたが、俺の絵に興味を示してくれた事と「やりたい事」があるのだから、美輪も何かあってここへ来ているのだろう。

…。


けど妙に引っ掛かっている妖精って単語。

まさかな。

残念だが流石にそれだけは信じられん。


俺の方は美輪が帰った後も着々と絵を描き進め、昨日夕方と呼べる時間帯になる頃には下描きを完成させていた。





「よし、水汲んでくるか……」


俺は例のでかい袋から空の500ミリペットボトルを取り出す。


今日から着色に入るので、筆用の水をここに入れるわけだ。

でこっちで小さい器に注いで使う。

小学校の時みたいに水バケツを使うのは微妙に恥ずかしいし…
そんなに水の量もいらないからな。



その辺の水道から水を汲んで戻ってくると、俺の荷物があるところに…


やはり今日も来たか。


「おはようっ桂」

にっこり嬉しそうに、美輪が微笑んで立っていた。


「今日は木の上にはいないのな」

「桜の木の回りがあたしのじんちなんです〜」

そう言って美輪はすとんと芝生の上に座る。


見た目小学生が、高校の敷地に対して陣地なんて言うのは……一般的におかしいよな?うん。


「美輪ってなんか、不思議だな」

「そぉ?」

まるで褒められたかの様に美輪は嬉しそうな顔をした。