須磨は家に帰ってからも、山梔子のことがずっと頭から離れなかった。 それは憧れや羨望などではなくただの苛立ち。 「苺花、ゴハン」 うさぎの縫いぐるみの頬をつねっていると母親から声をかけられ我に返る。 広い、殺風景な部屋が異常なほど虚しくなった。 昔はもっと……大切なものがあったような気がするが、それが何なのかも思い出せない。