「ユイちゃん………。ユイちゃんは、世界を滅ぼしたいの?」


「砂月さまに従うということは、そうなるのかも…」


「それって、ユイちゃんの意思?それとも、神城さんに操られて…!!」


「それはないよ!……あたしは、あたしの運命に従ってるだけ。いい?時雨。人ってのは、自分の定めからは逃げられない仕組みなんだ」


一瞬だけ振り向いて睨み合う彼らを見たユイちゃん。その表情がすっごい切ないもので、私はかける言葉を見つけることができなかった。


ユイちゃんの言うことは私にはイマイチ実感がないというか、よく分からないけど、それで辛い思いをしてるんだってのは分かる。」


「ね、ユイちゃん」


「ん?」


「私って、正義感が人一倍強いって言われてるし、その意識もある」


「うん」


「だからかな、私、ユイちゃんがすることを許したくない」


「……うん」


「でも、ユイちゃんは私の友達だよね。見捨てたく、ないんだ」


目の前にある手をぎゅっと握ると、上に持ち上げた。指をからめるとユイちゃんを強く見つめる。


「私、魔王を更生させてみせるからっ!!!」


「うんう……え?」


「「はぁ?」」


睨み合ってた二人まで奇妙な声をあげこちらを見たが、あいにくと私は気づいていない。ふつふつと不思議な使命感が込み上げてきて、思わず立ち上がって拳を強く握り締めていた。


「だって、世界が滅ぶなんて信じたくない。でも、戦うとかダメ。だって危ないもん。だったら、どっちかに諦めてもらえばいいでしょ!?そしたら、善悪で決めると魔王を説得すればいいだけじゃない!」


「え、いや、あの、時雨…?」


「うん、そうよ!そうだなっ!というわけで神城さん…いえ、神城!私は貴方を更生させて見せる!!」


びしぃ!と神城を指さすと、しーんとした空気になった。


「……くっ、はははっ!俺様を更生させる?なにを言ってるんだ、無駄に決まっている」


「やってみないとわからないじゃない」


ふん、と腕を組んで神城を見上げた。私を見下ろす目は冷たく、少しだけひるみそうになったが、ここで押されては先に進めない。キラッキラオーラの美形だろうが、恐ろしい表情の魔物っぽい魔王だろうが、どっちにしても悪は悪、更生させるべきものなのです。


手加減はしません。


「お前、馬鹿?まずお前がどっちの協力者かもわからないのに、そんなこと軽々しく言うんだ」


「協力、者?」