「じゃあ、時雨。まず誓うね、これから時雨に言う事には、一片の嘘もつかないって」


「おーけー。信じる」


「よっし、それでこそ時雨。ええと…まぁ簡単に言うと砂月さまが、小説とかでいうところの魔王という立場。七海が聖者」


かなりぶっ飛んだ内容に、なにそれと目を剥きそうになったけど、ユイちゃんがさっき、嘘は付かないと言っていた。


私は、今はユイちゃんを信じることしかできないんだ。ぎゅっと拳を握りしめると、続きを促した。


「それでこっちの小さいのがトキ、あたしがユイ。砂月さまの配下……部下?みたいなのになる。七海にも勿論配下はいて、向こうの双子」


「あ。君たち朝の………」


「知ってるの?」


「朝、職員室の場所教えて貰った人たち。今朝はありがとう」


声をかけると、二人ともこくりと頷いた。声は返ってこないけど、頷いたということは聴こえていたのだろう。


「それで?」


「二人は常に対の存在で、砂月さまの目的は七海を殺すこと。七海の目的は砂月さまを殺すこと。二人に世界の未来がかかっているの」


「世界が!?」


「女。ユイの言葉を聞いていなかったのか。俺は魔王だ。魔を統べるものだぞ?」


神城さんが相変わらずの不機嫌顔でこちらを睨む。その視線からは"わかれ馬鹿者"という罵倒の言葉がちらほらと見えるようで、口元がひきつる。


魔王とは言え…あまりにもオレサマすぎる。世界が自分中心で回ると思っているのかアレは。


「俺がとっとと聖者を滅ぼせばこの世は魔の手に落ちる。混沌がやってくるのだ」


「だから、そんなことはさせないと言っているでしょう。学習しませんね、砂月」


「お前こそ、俺様に勝てると思ってんのか?ハッ、ちゃんちゃらおかしい!」


「また睨み合ってる………。きりがないなぁ。ええと、それじゃあ七海さんはそれを止めるために魔王…神城さんと戦っているのですか?」


「そうなりますね」


こちらに向かってふっと微笑み、それからまたにらみ合いを続ける。いい加減にして、と言いたいけれどいがみ合う仲ならば今止めてもどうせまたすぐに睨み合うんだろう。


彼らのことは、今はあえて無視することにした。