鷹宮くんの後ろ姿を眺めながら、また私の意識は昔の彼へと引き寄せられる。
「氷之、磨尋《ひの まひろ》…」
私はほとんど無意識に彼の名を呟いた。
どれだけ未練があっても、もう彼に会うことなどないというのに。
諦めの悪い私は、いつだって彼の姿が脳裏に蘇る。
なんて惨めなんだろうか。
窓の桟に肘をついて、グランドを眺めた。
あの頃と変わらない夕陽が、グランドで部活中の生徒達を朱色に照らしている。
見える風景は同じでも、私の心は伴わないまま無情にも時間は過ぎていった。
数分後、鷹宮くんは少し着崩れた制服姿で教室に戻ってきた。
…別にそこまで急いで来なくてもいいのに、と思う。
「悪い、遅れた?」
「全然。もう少し遅いと思ってた」
そんな会話を交わしながら、私は鷹宮くんと校舎を後にした。

