彼は左目に掛かった色素の薄い金髪を掻き揚げながら、私の座る席へと近付いてくる。
朱色の夕陽に照らされて、キラキラと輝く自慢の髪は彼によく似合っていると思う。
「小鳥遊はそれで終わり?」
それは、この冊子作りを指しているのだろう。
「うん。これで終わり」
「そっか。じゃあ、送ってく」
いつもの笑顔のまま誘ってくる鷹宮くんに、私はいきなりの事に戸惑いを感じた。
「でも……」
そう、バスケ部所属の彼は夏のインターハイに向けて練習が組んであるはずだ。
この時間はまだ練習の真っ最中だろう。
大事な時に練習を早く切り上げてまで送ってもらう理由は無い。
「いいんだよ。練習は早めに切り上げたし」
そう言う彼の格好は、確かに今まで練習していたのか、ジャージ姿だった。
「とりあえず、着替えてくる」
教室で待っていてくれ。と言い残して鷹宮くんは廊下を駆けて行った。

