机に肘をつきながら、薄い雲が広がる蒼天を見上げた。
先生の言っている言葉なんて聞こえてこない。
そんなのは私だけではなく、6限目の古典の授業だ。
夢の世界に旅立っている人のほうが多いだろう。
私が進級してから早2週間が経った。
何も変わったことはない、いつも通りの毎日が流れるように過ぎていく。
「ねぇ、志奈。帰り、駅前の喫茶店に寄っていかない?」
授業が終わると同時に親友の樫木 未桜《かしわぎ みお》が嬉々とした表情で私を誘った。
…駅前の喫茶店。
このあいだオープンしたばかりの人気の喫茶店だ。
「うん。私も行ってみたいと思ってた」
笑顔を浮かべて言うと、未桜も輝かんばかりの笑顔を零して頷いた。
…のはずだったんだけど。
「ごめん、また今度でもいい?」
「いいよ、いいよ。仕方ないわよね、担任直々の仕事だったら」
そう、私は終わりのHRで担任から冊子作りを頼まれてしまった。

