4月。
頬を撫でる柔らかな微風が、私を通り過ぎて桜吹雪を散らす。
そんな中、私、小鳥遊 志奈《たかなし ゆきな》は遠に過ぎ去った過去に想いを馳せていた。
私の初恋は中2のとき。
同じクラスになった彼に初めての恋をした。
ふんわりとした柔らかい雰囲気を纏う彼に、私の視線は釘付けになった。
端正な容姿と柔軟な性格。
彼はどれをとっても女の子の視線を留めるには十分で。
所詮、私もその1人だったのだ。
“王子様”。
その言葉が似合う人は、きっと彼より他にはいない。
しかし、彼のその容姿、性格の裏腹に女関係は数えられないほど聞いたことがある。
来るもの拒まず、去るもの追わずの彼の周囲には常に女の子が群がり、日替わりの様に隣の彼女も変わっていた。
綺麗な見た目と柔らかな物腰の裏に隠された不誠実な彼。
その事実だけが、私の心を酷く苛んだ。

