明日のテストのことに思いを馳せていると、あることに思い当たり鞄を漁る。そしてそれを確認すると舌打ちしたい衝動に駆られる。いや、実際に小さくした。今日はいつもより早く下校できたのに、最悪だ。
鳴き止まない蝉時雨の道を、学校にしてきた忘れ物をとりにいくためにやや早足で引き返した。



放課後の学校という場所は静かだ。いつもは嫌いな学校だが、いまの学校の雰囲気は好きだ。
自分の足音が反響して、まるで他には誰もいないような、そんな独特な雰囲気。
窓から柔らかなオレンジが差し込み、影が色濃く伸びる様は幻想的だ。

心地好く感じる静寂に、自然とゆっくりとなった足取りのせいで少々時間がかかったが、見慣れすぎた教室にたどり着いた。
つい誰かいないかドアから教室の中を確認する。そんなことしてもテスト終わりの早く下校できる今日のこの時間帯に、誰もいないだろうとたかをくくっていたのだが…。
予想は裏切られた。誰かいる。
そうとわかると途端に入りづらくなった。
何故か気まずい。
なんだろうか、この気まずさ。普通に入って忘れ物をとればいいんだ。そう思うのになかなか踏ん切りがつかない。とりあえず、誰か確認しようと覗いたとき見えたそれに、俺は内心動揺した。
ふらふらと後退る。そして、何しにここに来たかとか、そんな理由を全部かなぐり捨ててこの場から逃げるようにただひたすら、走った。