晴れた空に悠々と浮かぶ白い雲。
うるさいくらいの蝉時雨にまとわりつくような暑さ。
夏真っ盛りの昼下がりに夏服に衣替えした学生たちがぞろぞろと帰宅し始める。その人混みのなかにまじって歩く自分はさぞかし平凡な存在だろう。右をみても左をみても同じ制服を着ている人たちをみてはため息をついて代わり映えしない毎日だなぁとか嘆いてみる。心の中で。

高校に入学してから2年が過ぎ、高校という環境に慣れた俺は生活も何もかもが緩んでいた。
テストでもどれくらいの点数を採っていれば良いのかという変な要領を覚えてしまったりと、どーでもいいことばかりが身についていく。
今日受けたテストの結果だって良くもなく悪くもない成績をおさめるだろう。中だるみの時期とはよく言ったものだ。

明日も今日といくらかしか変わらない日常を過ごすのかと思うと、気だるさと憂鬱が混じった塞ぎこみたい気分になる。
ちょっとくらい刺激が欲しいと望むのは、つまらないこの世界から逃げ出したいから。たとえそれが僅かな時間であったとしてもだ。
だが、犯罪という名の刺激に手を出すほど俺は無鉄砲じゃない。
そのアンバランスさがいまの俺と、俺を取り巻く世界を構成していた。