「真由ちゃん、龍輝が居なくて残念だったね」


と、近くに立つ大雅さんが小さく息を吐く。


「あの馬鹿、また連絡つかないんだもんなぁ」

「…ですねー」


…そう。

龍輝さんの携帯に花火大会のことをメールしたけれど返事が無くて、
それで電話もしたけれど、電源が入っていないらしく繋がらなかった。


今度は電源切らないって言ってたのになぁ…。




「まぁいいや、今日はアイツ抜きでいっぱい楽しもー。
ねぇ朔ちゃん?」


ふと、大雅さんの視線が朔也さんに移る。

視線を向けられた朔也さんは、小さな笑みを浮かべて私を見た。


…言葉は無かったけど、でもいつもの朔也さんと変わらない優しい笑み。

だから私も、いつもと同じように笑顔を見せた。




……。




混雑する電車に揺られ、ようやくたどり着いた花火大会の会場は更に人がいっぱいで、気を抜いた途端にはぐれてしまいそう…。




「うっわ、健ちゃんと優ちゃん行方不明ー」

「え?」

「つーかまた“二人きりで見るからー”ってやつだな」


あー…そういえば優ちゃん、「途中からは健吾さんと二人で見るから」って言ってたっけ。

…途中どころか、まだ始まってもいないんだけどね。




「ほんっとにアイツらマイペース…つーか馬鹿だな。
さすが龍輝の妹、さすが筋肉馬鹿」


…あはは。




「…って、朔ちゃんも居ねーし」

「へ?」


あれ?

…ほんとだ、朔也さんも居ない…。