[凛李愛side]

「琉生…チョコ、渡せなかった…」


帰り道、あたしのバッグの中には篠宮 莉央に渡す予定だったチョコが入ったまま。


「また来年もあるんだし、今年はいいんじゃない?」

「…そうね」

「そうだよ」

「このチョコ…食べちゃおっか」


あたしはバッグからチョコを取り出し、綺麗にラッピングされた箱を破いて開けた。


「ほんとに食べちゃうの?」

「このまま家に持ち帰るのも虚しいじゃない」


そう言ってトリュフを1つ口の中に入れた。


「…美味しい」


我ながらほんとに美味しいと思う。

こんなに美味しいトリュフを食べられないなんて篠宮 莉央ったら可哀想ね。


「あ!私今日用事あったんだった!ごめん凛李愛、私先帰るね!」

「え、ちょっと琉生!?」


琉生はあたしを置いて颯爽と走り去ってしまった。

こんな状態で1人で帰りたくないのに…


「……」


あぁ、もうやだ…

1人になった途端目頭が熱くなって視界がぼやけ出す。

口の中は相変わらず甘い香りが広がっている。


「もう、最悪…」


2つ目のトリュフに手をかけた時…


「凛李愛!」


聞き覚えのある声が聞こえたと同時に後ろから抱きしめられた身体。

どうして…

なんでここにいるの…

どうして追いかけてきたの…

琉生、篠宮 莉央に気づいて気を使って先に帰ったのね…


「よかった…追いついて…」

「……」


よほど急いできたのか耳元にかかる呼吸が荒い。


「受け取ったチョコ、返してきた」

「え…?」

「ごめん、お前がいるのに他の奴から受け取って…」

「……」

「もうお前以外からは受け取らない」

「………」

「凛李愛のチョコ、食いたい」

「もう食べちゃったわ」

「は?」

「だから、もう食べちゃった!」


後ろを振り返り、べっと舌を出してやる。


「まじ…何食ってんだよ…」

「んぅッ!?」


え!?

え…!?

あたし、今キスされて…!?


「ッ!?」


ぬるりと入ってきた舌。

あたしの口内を犯していく。


「んぅ…」


ここ、外なのに…

誰かに見られたらどうするのよ…


「ふ、ぅん…ぷはっ!」

「…うま」


やっと解放された…


「ば、ばか!!こんなところでやめてよ!」

「俺のチョコ食ったお前が悪い。今しないとチョコ、味わえなくなるだろ?」

「はぁ!?」

「もっかい…」

「え!?ちょっ…」


また!?


「ふぁっ…」


やだやだ!!

もう変な声出ちゃう…////


「んん〜〜〜っぷは!」

「おい、暴れるな」

「チョコ全部食べてないから!」

「は?」

「まだ残ってるから!!ほら!!!」

「…それもっと早く言えよばか」


そう言ってふいっと顔を背けた篠宮 莉央。

どんな顔をしているのかわからないけれどその耳は確かに赤かった。


「…行くぞ」


ふいに腕を引っ張られ足がもつれそうになった。


「行くってどこに?」

「お前ん家」


あぁ、送ってくれるのね。