「痛ッ…」
少し歩いて足に限界がきた。
「…まさかお前定番の…」
「あ、足が痛い…」
定番だけどッ!
でも慣れない下駄履いてるとどうしてもこうなるのよ!
「まじかよ…」
うわ…
すっごくめんどくさそうな顔してる…
「別にあんたの手なんか借りるつもりないし、あたしを置いてさっさと帰りなさいよ」
「……」
そう言ったのにこいつは無言でしゃがみ込んで…
「置いていける訳ねぇだろ。お前一応お嬢様だしな」
「何よ…いつもはお嬢様扱いしないくせに…」
「るせぇな…いいからとっとと乗れ」
「…嫌よ。浴衣でおんぶなんて無理」
おんぶなんて子供っぽいし、それに浴衣なんだから足開けないし。
「はぁ?お前人がせっかく…」
「うっさいわね!だからあたしのことなんか置いて…きゃ!?」
突然視界がくるりと回って…
「え…?」
目の前には篠宮 莉央の顔。
バックには綺麗な星空。
あれ…?
これって…
「これなら問題ないだろ」
嘘…
これ…
お姫様抱っこじゃない!!
「問題あるわよ!ていうかありすぎよ!!」
「うるさい。黙って運ばれてろ」
「はぁ!?」
確かにあたしはお姫様だけど…
お姫様はあたしだからお姫様抱っこは"凛李愛様を抱っこする"って意味にもなるけど…
でも!!
恥ずかしいのよ!
視線が痛いのよ!
「降ろせ降ろせ降ろせーーー!!!」
「ウザいウザいウザい」
「なッ!?」
ウザいって…
この凛李愛様に向かってウザいって…
生まれて初めて言われた…
言ったことは数えきれない程あるけど言われたのは初めて…
ウザいって結構傷付くのね…
それよりも!
こんなところ知り合いに見られたらどうすんのよ!!
もし同じ学年の人に見られたら…?
学園中に広まるわよ!?
「ね、ねぇ…やっぱり降ろして?」
「何度も言わせんな。ぜってー降ろさねぇから」
あーもう!!
さっきからすれ違う人達の視線が…
「もう痛いの治ったから」
「嘘つくなよ」
「嘘じゃないって!」
「これ以上喋ったら口塞ぐぞ」
「あんた今両手使えないじゃない。口なんか塞げるはずないわ」
「…塞げるよ?」
「え…?」
フッと不敵に笑って…
「口で塞げるけど…?」
「〜ッ///」
なんてこと言ってんのよ!!
"口で"って…
つまり…
キ、キス…?
こんな場所でキスなんかされたら…
それだけは絶対に嫌!!
うぅ…
悔しいけど今は黙っておこう…

