[凛李愛 side]

「俺はあんなこと一言も言ってねぇんだけど?」

「……」


篠宮 莉央…

邪魔しないでよッ!

ここは黙って"実はドMだったんだ"とでも言っとけばいいのに!

まぁこいつがそんなこと言うハズないってのはわかってるんだけど。


「そういえばよく見つけられたわね、こんな人混みの中で…」

「あぁ、それなら俺がカナにLINEして…って話逸らすなよ」


チッ…

話逸らしてもだめなのね…


「る、琉生たちははぐれてから何してたの?てかどうしてはぐれたのかしら…」

「私たちは金魚すくいとか射的とかで勝負してた」

「あとカキ氷早食い競争も」


やっぱり…

琉生ってば見掛けによらず精神年齢低いんだから…


「おい…俺は"お前の尻に敷かれたい"なんて一言も…」

「もう花火も終わったことだし、そろそろ帰るわね!」


篠宮 莉央の言葉を遮ったあたしはみんなに別れを告げて歩き出した。


「お前、何1人で帰ろうとしてんだよ」

「え…?」

「また変な奴に絡まれたらめんどくせぇだろ…」


…何が言いたいの?


「こんな時間に女の子1人で帰す訳にはいかないよ〜」

「…?」

「帰るなら俺らが送ってあげるってこと♪」

「え、別にあたし1人で平気だけど…」

「「「いや、絶対平気じゃない」」」


3人とも声揃えて言わないでよ!


「ってことで琉生ちゃんは俺が送っていくね!」

「え…私奏汰なんかに送ってもらいたくないんだけど」

「我慢してくださいー!もし俺が"凛李愛ちゃん送っていく"なんて言ったら莉央に何されるか…」

「てめー何言ってんだよ…」

「やばっ!琉生ちゃん行くよ!じゃあ凛李愛ちゃんばいばい♪」

「ちょッ!?引っ張んなよ!」

「あ…ばいばい」

「凛李愛、またね!」


そしてその場に残されたあたしたちは…


「……」

「………」


沈黙…


「ねぇ…あたし1人でも大丈夫だから帰っていいわよ?」

「…何言ってんだよ、お前バカか」

「なッ!?」


また…

またバカって言われた…


「1人で帰らせてもしお前になんかあったら…」


え…

このセリフって小説とか漫画によくある…

じゃあこのセリフの続きはやっぱり…


「お前絶対俺のせいにするだろ」

「…は?」


何、今の…


小説とか漫画はこんなこと言わないわよ!?

"お前に何かあったら、俺…"みたいな展開じゃないの?

違うの!?


あぁ、そうか…

あたしたちまだそういう関係じゃなかったわね…

そんなこと言う訳ないか…


…ん?

"まだそういう関係"って…

"まだ"って…

あたし何言っちゃってるの!?

あたしと篠宮 莉央がそういう関係になる未来なんかないのに!!


ある訳、ないのに…


「ほら、行くぞ」


引っ張られる腕。


いつものことだけど…

こいつあたしの扱い荒いのよ!!


未月財閥長女、未月 凛李愛様によくこんな扱いできるわね!

あたしにこんな扱いするのはこいつが初めてよ…