そして着いた祭り場。
「人多すぎ…キモい」
「お前、お嬢様がキモいとか言うなよ…」
「うっさい、黙れ」
だってあたし人混み嫌いなんだもん。
「みんなはぐれないようにね〜」
「お〜」
「凛李愛」
ドキッ…
「な、何よ…」
今の"ドキッ"って何!?
「お前絶対はぐれるから繋いでてやるよ」
そう言って差し出された左手。
「はぁ!?あたしがはぐれる訳ないでしょ!バカにしないで!」
それに繋いでてやるよって…
上から目線…
ムカつく…
けど…
「まぁアレよ、あんたがどうしてもって言うんなら繋いであげてもいいけど?」
仕方なく、だから!
「あー…じゃあいいわ。絶対はぐれんなよ」
そう言って差し出した左手を下ろしてスタスタと歩いていく篠宮 莉央。
…え?
手、繋ぎたいんじゃないの?
「ちょ、ちょっと…?」
「……」
…無視?
「ねぇ、ちょっとってば!」
「……」
…(怒)
こいつ…
凛李愛様を無視するなんて…!
「……」
無言で歩き続ける篠宮 莉央。
あたしはその背中を追っていくのがやっとで…
歩くの速すぎなのよ!
人混みの中、時々その背中を見失いそうになる。
それがなぜか怖く感じた…
「ちょっと待って!」
あたしは咄嗟に篠宮 莉央の左手を掴んでしまった。
「…?」
あ…
やっと振り向いてくれた…
「や、やっぱり…繋いどく」
あれ…?
あたしなんでこんなこと言ってんの…?
これじゃまるで…
「なんだよ、繋ぎたいのはお前の方じゃん…」
「…ッ///」
そう…
これじゃまるで、篠宮 莉央と手を繋ぎたかったのはあたしの方みたいだ…
「勘違いしないでよねッ!ただはぐれて1人になりたくないだけよ!」
そうよ…
ただ1人になりたくないだけなんだから!!
「だったら沢村にくっつけばいいだろ?俺じゃなくてもよくね?」
そう言って奏汰と一緒に少し先を歩く琉生をチラッと見る篠宮 莉央。
「…ッ!」
そうだけど…
そうだけどあたしは……
「なんで…なんでそんな意地悪言うのよ…」
涙目になって俯いていると頭にポンッと手を置かれ…
「あー、ちょっといじめすぎた、悪かったな」
そう言って、ほら、と差し出された左手。
その手に自分の右手を重ねると、優しく握りしめてくれた。
「お前さ、そろそろ俺のこと好きになった?」
…?
……?
………?
こいつ…
アタマダイジョウブ?
「何言ってるのよ!あんたなんか好きになる訳ないでしょ、この自意識過剰野郎!!」
バッカじゃないの!?
あたしが篠宮 莉央のこと好きになる訳ないし!
「…まだか」
「まだって何よ!?まだって!あたしを他の子たちと一緒にしないで!!」
そうよ…
あたしはそこらの子とは違うんだから。
あんたなんか好きになんないっつーの!!
「他の奴となんか一緒にしてねぇよ…」
ボソッと呟かれた声はあまり聞き取れなくて…
「え、何?なんか言った?」
「別に何も…」
なんなのよ、こいつ…

