[凛李愛side]

いよいよ夏休みが近くなってきたある日の放課後。

いつものように流生と帰ろうとした時、ポケットの中のスマホが鳴った。


『5分以内に資料室に来い』


…え?

誰よ、これ…


知らない人からのLINEだった。


「流生、変な人からLINEきた〜」

「何!?見せてみ」


流生にスマホの画面を見せる。


「あー、これ篠宮だよ」

「はぁ!?なんで篠宮 莉央があたしのLINE知ってるのよ!教えた覚えなんてないわよ!?」

「あ、ごめん、私が教えたんだ」

「流生が!?」

「うん。2人仲良いのにまだLINE知らないみたいだったから…」

「仲良くなんてないけど!?」

「ごめん〜」


…百歩譲って許すとして……

"5分以内に資料室に来い"って…

なんであたしが…!


「流生、ちょっと一緒に…」



ピコンッ



あたしの声を遮ってまたスマホが鳴った。


『1人で来いよ』


はぁ!?



ピコンッ



『あと3分』


あぁ〜もうッ!!


「ごめん流生、先に帰っててもらえる?」


そう言うと流生はニヤニヤしながら見送ってくれた。


あと3分って…

無駄に広いこの学園。

間に合うかしら…



ガラガラッ



勢いよくドアを開ける。


「あ、来た」


篠宮 莉央が奥の机に座っていた。


「ギリギリセーフだな」

「な…で、あんたがッ、あたし、に…命令すんのよッ!」


走ってきたせいで息がきれて上手く話せない。


「これ、お前も手伝え」

「何よ、これ…」


机の上には何種類ものプリントが山積みになっている。


「見りゃわかるだろ、夏休みの課題。これ学年分まとめるの」

「はぁ!?なんであたしがそんなこと…」

「学年主任が成績学年トップの俺にって頼んできたんだよ」


こいつ…

凛李愛様を差し置いて学年トップだなんて…


「1位だけにやらせるなんてひどすぎねぇ?お前2位だろ?手伝え」

「い・や・よ!せいぜい1人で頑張りなさい」


そう言って教室から出ようとした時…



ガラガラッ



「篠宮くん、1人で大丈夫…あれ、未月さん?」


担任が入ってきた。


「なんだぁ、未月さんが手伝ってくれるなら大丈夫だね。じゃあ僕は他の仕事があるからここは2人に任せたよ。頑張ってね」


そう言って出ていった。


た、担任〜!!!


再び2人きりになった教室…


「手伝ってくれるよな?」

「う…」


担任に言われてしまったんだから仕方ない。

これで手伝わなかったことがばれたらあたしの評価が下がってしまう。


「仕方ないわね…心優しい凛李愛様に感謝しなさいよ」

「どこが心優しいんだよ…」


そう呟いた篠宮 莉央をキッと睨んでから隣に座った。