「はぁ〜、すっかり長居しちゃったね」
そう言った奏汰はこの家にすっかり慣れてくつろいでいた。
「わ、もう1時間もたったのか。凛李愛の風邪悪化させちゃったら悪いしもう帰ろっか」
「玄関まで送るわ」
「じゃあ凛李愛、早く治してね!」
「学校で待ってるよ〜」
「うん、来てくれてありがと…」
「じゃあ、私こっちだから」
「俺も〜莉央、凛李愛ちゃんじゃあね〜」
手を振りながら2人は行ってしまった。
「……」
「………」
残されたあたしたちに沈黙が続く。
なんで黙ってる訳!?
なんか喋りなさいよ…
「…お前、ほんとに熱あるの?」
やっと喋ったかと思ったら何?
「あるわよ!」
あたしが仮病だって言いたい訳?
失礼な奴ね!!
「どれ」
「…え?」
コツッ…
「ひゃっ!?」
ぐらっ
あ…
やば……
「…ッ!何してんだよ…」
転びそうになったあたしを篠宮 莉央が受け止めてくれた。
「だって…あんたが急に…」
おでこくっつけてくるからでしょ…!!
それにびっくりして身を引いたら足がもつれちゃったんじゃない!
「あんたのせいだから!」
「…お前、ノーブラかよ…」
「ふぇ?」
そこであたしはやっと気づいた。
篠宮 莉央の右手が左胸にあることを……
「いっ、いやーーーーーー!!!!!!」
バチンッ
「…いってぇ…」
「信じらんない!ほんと最低!!」
篠宮 莉央に平手打ちを食らわせたあたしは奴をキッと睨んだ。
「事故だって…俺だって触りたくて触った訳じゃねぇ」
「今まで誰にも…琉生にだって触らせたことないのに…!」
「それは災難だったな。なんでつけてねぇんだよ」
「寝る時はノーブラ派なの…!」
なんでこんなこと篠宮 莉央に言わなきゃなんないのよ…!
「お前…」
「な、何よ…」
急に顔を近づけてきた篠宮 莉央。
「乳垂れんぞ」
そう耳元で呟いた。
「じゃ、俺も帰るわ。お前やっぱまだ熱あるっぽいからちゃんと寝てろよ。じゃあな」
「よ、余計なお世話よ!!」
垂れるとか…
垂れるとか……!!!
ほんっと余計なお世話なんだから!!!!
「大ッ嫌い!!!!!」
帰って行く奴の背中に思いっきり叫んでやった。

