「でもさ、俺の思ったこと、っていうのかな…。それなら伝えられる。」
「うん。」
「実都のこと傷つけるこというかもしれない。でも、全部実都のためだから。だから、ちゃんと聞いてほしい。」
「うん…。」
ちゃんと聞こう。でも、奏斗。
私の決意は堅いよ?
奏斗はふぅ、といって
覚悟を決めたように話始めた。
「実都、お前は兄貴のいないこの『今』っていう、時間(トキ)から逃げてるんだ。兄貴のいた『過去』に浸ってるんだ。」
「あたしが、逃げてる…?」
「そうだ。お前は兄貴のいないこの世界を受け入れてないんだ。だから『過去』っていう時間の中で今のお前は生きてるんだ。」
「ぢゃぁ、今のあたしは…死んでるの?」
「あぁ。今は野々原 実都っていう物体が存在してるだけで、中身は空っぽそうだろ?」
確かにそうかもしれない。
私の中の時計は
『あの日 』から止まったままなんだ。
