「――きゃっ!!ちょ、柊く……」
「おい、そんな慌てんな。落ちるぞ」
だ、だって……
私が慌てるのもおかしくない。
私は今、いわゆる“お姫様だっこ”をされてるんだもん……
当然、今までに彼氏がいなかった私にとってお姫様だっこは相当恥ずかしい…
柊くんとの距離が近くなって…
柊くんが下を向いたら息がかかりそう……
「……なにしてんの?栞を離せよ」
郁也が近寄ってきて、柊くんの肩をグッと掴んだ。
「……悪ぃけど」
柊くんはというと、肩に置いてある郁也の手を振りほどくと
「栞をこんな状態にしたのは、多分俺のせいだから」
小さくボソッと、だけどよく通る低い声で呟いた。
「は?それって――…」
「行くぞ、栞。しっかり掴んでろよ」
郁也がなにか言おうとしたけど、柊くんはそれを遮って
保健室を飛び出した。