廉は安堵のため息をつきつつ、周りを見回した。 特に変わったところはない。 今日はもう帰ろうかと思ったその時。 「……あれ?」 一人の少女が、廉の前を通りすぎていった。 女の子が一人、こんな夜にうろつくものじゃない。 その子の足取りは重く、とてもゆっくりとしていた。 いつもなら気に留めることは無いが、今日は違った。 その子は廉と同じ、花影高校の制服を着ていた。 「どうしたの?」 リュカが不思議そうな顔で廉を見てくる。 彼はリュカの質問に答えず、女の子の後をゆっくりと追った。