すかさず正紀が近寄る。
廉の身体を支えようとしたその時。

「離れて!!」

リュカが叫んだ。
彼女に従い、正紀が廉からパッと離れる。

「どうして!!」

「私の言うことを聞きなさい!!」

不満そうに文句を言う正紀を、リュカが一蹴する。
彼女は、いつになく真剣な面持ちで廉を見ていた。

「どうして……」

パタリと動かなくなる廉。
正紀は心配そうに彼を見守る。

リュカは目を吊り上げ、小さく言った。

「……気配がしないのよ」

「気配が?」

リュカの言葉を反芻する。
彼女は頷き、腕を組んだ。

やがて、廉が身体を起こした。
彼は、二人の方を見ると、妖しく微笑む。

正紀は目を丸くし、リュカは眉を寄せた。

「アレは――廉じゃないわ」