埃を払い、立ち上がる廉。
正紀もゆっくりと立ち上がった。
お互いに目が合う。
ふざけ合ってる場合でもないようだ。
「あのさ……」
口を開こうとした瞬間、心臓が大きく鳴った。
少しずつ息苦しくなり、その場に崩れ落ちる。
「なっ……これ……」
前にも一回だけあった。
確か、初めて楓――その時は、女子生徒としか分からなかったが――と対峙したときだ。
「廉!!」
リュカと正紀が叫び、彼に駆け寄る。
必死に廉の肩を叩くが、彼は胸を掴んだまま苦しそうに呼吸を繰り返すだけだ。
『また人に頼ろうとするわけ?自分じゃどうにかできないの?』
頭の中に響いてくる声。
レンだと理解するのに、時間はかからなかった。



