自転車置き場に立つ桜の木。 歩くたびに花びらがひらひら舞う。 春の匂いが鼻をツンとさせて、甘酸っぱくて切ない。 真新しい制服に履きなれないローファー。 何度も髪の毛を触っては、落ち着きを隠せない心情。 ドキドキして、緊張も不安も、全部、全部詰まった心。 春風が体を通り抜けて背中を一つ押した──…