浅「ここまで来れば…、」


結構走ってきたので足を止める。
近くにあったベンチに2人で腰を掛ける。
しばしの沈黙…、先に口を開いたのは浅井だった。



浅「あのぉ、私浅井菰って言います。その、慧君とはお友達で…、」
?「あら、そうなの?私は慧の母の正美−マサミって言います。」



慧と麗の母正美は軽くお辞儀をした。
つられて浅井もお辞儀をした。



浅「あのぉ、率直に聞きます。麗ちゃんはどこにいるんですか?」
正「麗ですかっ麗は、麗は…、」



頭を抱えて麗の名前を連呼している。
これは何かあると思い少し待ってみる。



正「ごめんなさいっ、何だかあなただったら話すことできるわ。」
浅「???」



少しづつ話を始めた正美に静かに聞く。



正「夫がこの世を去ってから少し経った時、借金が見つかったの。私もそんな記憶が無かったからびっくりよ、」


ここまでの話は慧から聞いていた事だった。
しかし浅井はその後の真実を知る事になる。



正「だけど返そうと頑張ったの、全然まだだけどね…。そしたら相手が麗でチャリにしてやるとか言い出して、」
浅「えぇえっ!!?」



まさかの展開でびっくりして大きな声を出す。
その展開は予想してなかった!!!!



正「ふふふっ、そんなに驚かないで」
浅「あぁっすみません…、」


驚かないっていうのが無理よねなんて言っている正美の顔は寂しげだった。



正「自分の子供を渡してチャラにするなら自分で返すと言ったの。そしたら無理矢理麗を奪うって言われたの。」
浅「え…、」
正「だから、私は麗を違う部屋に閉じ込めてしまったの……、」
浅「えっ!?」



最初のえ…、と次のえっ!?は意味が違う。
びっくりして今度は立ち上がる。
また正美は笑いながら立ち上がった。



正「子供が危険なのに何もしない親なんていないと思った、だけど私が間違っていたわ…、お願い一緒に麗を迎えに来てほしいの」
浅「はい、お安い御用です。」



2人はゆっくりと歩きだした。
しかしその後ろについてくる1つの影の存在は気付いていなかった。