「……降ろしてください」
「わーなんかコトに襲われてるみたい、いいよどこ触っても」
「先生っ…!本当にセクハラで訴えますよ」
怒った口振りで眉を寄せて少し下から睨み上げる彼女が可愛くて仕方ない彼は、まだ眠気が残る身体を上半身だけ起こす。
彼の胸元についた手は呆気なく奪われて暖かい温度に包まれる。
「なんか、こうしてるとコトが甘えてるみたいだね。可愛い」
「ご飯いらないんですか…?」
「小音ちゃん可愛いー」
「変態」
罵倒されたにも関わらず嬉しそうに笑うからより一層変態度が増す。
ぎゅぅう、と。宝物の人形を抱き締めるみたいに大切に、強く、優しく抱き締める彼にもうなにも言えなくなる。
ここは黙っているほうが良いみたいだと、考えて仕方なく口を閉ざす。
と、どこか近くで何度も聞いたことがあるバイブ音が。どうやら枕元にある彼の携帯らしい。
「先生」
「無視」
「先生」
「無視」
「……」
「わかったよ、出る出る」

