翌日、彼の家には普段通りに朝食を用意し終えて寝室に入っていく彼女の姿があった。
「………起きてください、朝です」
「んー……コト…」
「起きてください」
「あと5分……」
「―――もういいで…」
駄々を捏ねる彼に呆れてもういいですと踵を返そうとした彼女の細い手首が掴まれる、男らしくも綺麗な手に。
力任せに引っ張られて縺れた足ごとたどり着いた先は彼の腕のなか。つまりベッドの上である。
寝起き独特の暖かさをもった彼の身体は容赦なく包み込んでくるものだから息が、しずらい。
「苦しいです…」
「ごめん、好きだよ」
「セクハラは…ちょっと…」
目を閉じているくせに的確な位置に唇を当ててこようとするので咄嗟に手を伸ばす。
と、それに対して些か気分を悪くしたセクハラ中の小説家が切れ長の目を開いて責めるように見つめる。
「(怒っ…た?)」
そんな態度は怖すぎて、彼女は小さく喉を鳴らした。
それを眺めるように見る彼はくるっと寝そべると、腕に抱いたままの彼女を上にのせた。

