気怠い足取り、というか引きずるようにたどり着いた先は彼のとは似ても似つかないシングルベッド。
メイク落とさなきゃとか。洗濯物が。なんてことが頭に浮かんだけどなにもやる気が起きない。
ごろん、と仰向けになって目を閉じれば聞こえてくるもの。
いくら時間が経っても脳に、鼓膜に染み付いていた綺麗な女性の声。
「ネクタイか…」
“何か”があったんだろう、ネクタイを外さなければならない事情が。―――他意にしても本意にしても。
そうやって脳内で理解はできている。なのに、うまく理解してくれない、心が。
何度拭っても溜まる水がその証拠だ。
だけど、だけど…っ
「せっ…先生…、
まだ、
まだ、
声が…聞きたいっ…」
まだ、一緒にいたいのだ。
どうしても。

