使用人を休ませたがる雇い主なんてこのひとぐらいなんじゃないか。
いそいそと、何故か嬉々とした表情で彼の香りのするタオルケットで彼女を包み込む。
限界まで寄った眉と厳しすぎる視線を笑顔でかわす彼はポジティブすぎる。見つめないで、恥ずかしい。なんて。
「よいしょ」
「は、ちょ、先生」
そのタオルケットの中に入ったかれは方肘を立ててそれに綺麗な顔をのせる。ちらりと狙ったような流し目に、胸が鳴る。
「なに、どきどきしてるの」
「ちが、います」
あながち間違ってないそれに再び心臓が震えた。だけど見透かされるのが嫌でふいに視線を逸らす。
くすくす笑う声が聞こえるが無視だ無視。
と、彼の大きめな手が彼女の指を掴む。きゅっと握る仕草にふと疑問が浮かぶ。
「手、繋ぐの癖なんですか?」
「まさか」
それに困ったような、だけど嬉しそうな笑みをつくる彼。目尻がだらしなく垂れる。

