「馬鹿ですか…先生って」
「……名門大学卒業してるけど」
「そういうんじゃなくて、あの、仕事があるんです」
「そうだね、で?」
わかってるくせに言わせようとする高学歴。眠気と雰囲気に若干口調が砕ける彼女は彼を睨む。
「仕事しにきてるんです、ここには」
「うん、そうだね」
ちょっと苛つくようなすっとんきょうな声。彼のリズムに取り込まれてしまっている。
ニヤリと口許に笑みを浮かべる彼が、どうしても嫌いになれない。
「じゃあさ、ハウスキーパーさん仕事があるんです」
「――――」
「ここでゆっくり寝てください」
「―――…、せん」
「夜までね、お願いします」
ハウスキーパーさん。わざとらしくそれを連呼する彼は業務命令という名の休養を与えようとする。

