指示された通りに黙ってしまうのは彼の醸し出す背徳的な雰囲気に声が出せなくなったから。
こくん、喉が鳴る仕草でさえ彼女を緊張させる。
「(こわい、かもしれない)」
瞬間、ふわりと重力にしたがって落ちる身体。彼が力を抜いたことによって、重なる。
彼女の肩口に落ちてきた顔はもう見えないのに辛そうな気がした。
「ごめんコト、謝るから、ごめんね。泣かないで」
嗚呼、そのせいで。そのせいで彼は辛そうなのか、だって声が震えている。
「泣いてないですよ」
目尻から流れるそれに今の今まで気がつかなかった。それほどまでに彼に集中していた。
「コトが泣くのは、嫌だ」
「……泣かせないで」
「うん、ちょっと我慢出来なかった。コトで頭いっぱいになっちゃった」
「……………重いです」

