‐彼と彼女の恋物語‐




数分してあまりにも手持ち無沙汰な彼女は無理矢理そこを抜け出してコーヒーと読みかけの本を持ってくる。



「早く座って」



何故か急かされてまた彼の足の間に。人肌というのはとても不思議で、勘違いしてしまう。


もしかしたら、と。



「コト、具合悪い?」

「大丈夫です。ごめんなさい」



酷いくらいに優しい彼はきっと誰にだって同じ態度。自分だけではない。



「(きっと興味本意の行動なんだろうな…)」



彼が想う気持ちは彼女にとって初めてのものだから、対応策がわからない。ひとりだと言われたあの日から、彼女は求めてはいけない。



愛されることを。



「先生」

「ん?」

「仕事があるんで」

「いいよそんなの」

「仕事があるんで」



するりと腕のなかを抜け出した彼女はもう、―――捕まえられないような気がした…―――