―――それからはよく覚えてない。ふわふわと不安定な雰囲気に飲まれないようにしながらも全てを彼に任せた。



下着なんていつ取られたかすら分からない。ただ気がついたら身体が熱くて、何度も何度も声をかけてくれる彼に頷いてばかりだった。



「………コト、噛んでもいいから」

「っ…い……っ」



激痛に息を詰めて顔を歪めたその瞬間に、彼は言った通りに抱き締めて呼吸を促してくれていた。



「無理だったら言って…、やめらんない…」



苦しそうに熱い吐息を吐いた彼はいつまで経っても彼のままだった。キツイはずなのにどこまでも優しく、ゆっくり時間をかけて。



シーツがはだけているのに気にすることだって出来なかった。それくらい彼を受けとめることに、受けとめてもらうことに一生懸命だった。



意識が落ちていく中でふわりと彼が囁いた。



「…コトをくれて、ありがとう」



こんなに大切に愛してくれているという事実に、涙が出た。胸がきゅっと、ときめいた。



ーーーーーー翌朝。



じんわり、確かに伝わる体温に先に目を覚ましたのは昨晩愛しい姫を大人の階段へと導いた彼である。


初めてで、きっと想像もつかない程の痛みや不安があったであろう彼女。それでも一生懸命に好きだと伝えようとする姿に何度歯止めが効かなくなったことか。



幸か不幸か緊張してたのであろう彼女がすぐに眠りについたからそれ以上しなくて済んだのだ。


カーテンの隙間からのぞく朝日に照らされる白い肌。シーツで覆い包むように抱きしめると、まるで猫のように擦り寄ってくる。


ちらりと覗いた胸元には咲きほこる赤い薔薇たち。昨晩押し込めたはずの欲望が湧いてくる。


男の性とでも言おうか、愛おしい人を前に欲情せずにいられない。


それでも決して起こしたりしないのは、そんな欲望を上回る果てしない愛があるから。


初めてはもちろん、2度目だって3度目だって一生忘れられないような大切な宝物にしてあげたいのだ。


だから……今はおやすみ。


ーーーーー聖夜にはたくさんのプレゼントを、君に。